咲夜>美鈴

 レミリアは責任を感じずに入られなかった。
 ほんのちょっとした、遊びのつもりだったのだ。しかし、結果として、咲夜は門番に、美鈴はメイドになってしまった。
 普段はわがままなレミリアだが、そればかりは、やはり責任を感じずに入られなかった。

「はあ……」
 場所は変わって紅魔館の門。メイド服を脱ぎ、代わりに門番隊の服を着た咲夜は、門にもたれ、ため息をついた。
「あっ……」
 さっきまで働いていた場所の、紅魔館の屋敷のほうをちらりと見ると、ちょうど美鈴が出てくるところだった。
 二人は気まずくなり、素早く目をそらした。
 咲夜の横を通り抜ける美鈴は肩を落としている。その姿は、目をそらしたくなるほどだった。
 美鈴の目には、咲夜もまた、地面に視線を落としていて、声を掛けづらい雰囲気を醸し出している。結果的に、二人とも、話をすることはできなかった。

「おっじゃまするぜー――およ?」
 いつものように門を突き破ろうとした魔理沙は、そこにいるべき人物がおらず、いるはずのない人物がいることに気づき、魔法を止めた。
「咲夜じゃないか? 何してるんだよ」
「みりゃわかるでしょ。門番隊になったのよ」
「はあ? お前、メイドだろ。なんでそんなことしてるんだよ」
 咲夜は言葉につまり、視線を落とした。
「何があったんだ?」
「じ、実は……」
 咲夜は、言い辛そうに、それでもやっとのことで、言葉を吐き出した。 
「お嬢様が、腕相撲大会を紅魔館で開かれたの。
 私、美鈴に勝っちゃった……」

【あとがき】
【SS(シュール・ショート)三本詰め】に収録させていただきました。
一番最初に思いついたアイディアです。

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